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歩くこと、または飼いならされずに詩的な人生を生きる術

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歩くこと、または飼いならされずに詩的な人生を生きる術 / 著者・トマス・エスペダル、翻訳・枇谷玲子 / 河出書房新社



インナーボイスに傾けて



旅先では特によく歩きます。路面電車やバスで行けば数十分のところもわざわざ徒歩で1時間くらいかけてゆっくりと、いや実際には普通の徒歩よりは早歩きになっているのかもしれませんが、旅先の土地の感触を足全体で踏みしめ、建物の間を吹き荒む風を感じながら、ズンズンと歩いていくのです。
すると頭の中の『わたし』が私にお話を始めたり、今私が考えなくてはならないことについて、『わたし』が私と対話をしくれたりするのです。意外とそんな自己対話の中から解決の糸口が見えたり、作品や展示の構成が決まったりと不思議な体験をよくしています。そしてそれは、普段の日常ではなく旅先、そしてたくさん歩く瞬間に起こってくるのです。


本書『歩くこと、または飼いならされずに詩的な人生を生きる術』は、ノルウェーを代表する作家、トマス・エスペダルが2006年に発表した小説です。ページを開いて読み進めていると、小説なのか詩なのかはたまた散文集なのか分からなくなってきます。それもそのはず、本書は、歩くこと、作家として生きること、愛、芸術、詩、自然について、紀行、自伝、エッセイ、手紙、日記といった複数ジャンルの境界線を徒歩で進んでいくかのように、自由で軽やかに進んでいき、自伝とフィクション、エッセイの3つのパートが互いに織り込まれている不思議な一冊なのです。

そして目に入ってくる活字を追っていると、不思議と自分が旅先で歩いていた時に感じた『わたし』と出会う感覚に訪れるのです。きっとストーリーの主人公の心情や思考の歩くスピードと共鳴していき、自分自身も歩いている時のような状態や気持ちになっているのでしょう。


「歩くことは、最高の社交だ。歩くことで、自分自身と二人きりになれるのだから」と本文に書かれています。


この一冊を読み終わる頃には、近所をふらっと散歩に出てみようかななんて思うかもしれませんよ。




<目次>
第1部(とある通りからはじめてはどうだろう?;堕落する;歩き出す前に;どうしようもないリビング;消える夢 ほか)
第2部(スポーツとエンターテインメント;ジャコメッティと娼婦;ランボーの辿った道;旅はどうやってはじまるのだろう?;道を探す ほか)




トマス・エスペダル
1961年、ノルウェーのベルゲン生まれ。1988年『香水からの野生的な逃避』(未邦訳)で作家デビュー。2009年『芸術に逆らって』(未邦訳)でノルウェー文学批評家賞を受賞。2011年『自然に逆らって』(未邦訳)ではノルウェーで最も権威ある文学賞、ブラーゲ賞を受賞した。言葉と文学に溢れた人生を生きたいという思いを持つがゆえ、文学について時に歯に衣着せぬ物言いで新聞をにぎわす一面も持つ。

枇谷玲子
1980年、富山県生まれ。2003年、デンマーク教育大学児童文学センターに留学(学位未取得)。2005年、大阪外国語大学(現大阪大学)卒業。在学中の2005年に翻訳家デビュー。北欧の書籍の紹介に注力している。

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