世界のキッチンから 商品開発と写真の関係 / 著者・高橋ヨーコ、写真・高橋ヨーコ / 美術出版社
世界はキッチンからできている
キリンビバレッジから出されている清涼飲料水『世界のキッチンから』をご存知でしょうか。有名なものでいうと『ソルティライチ』なんかがそれです。コンセプトは「世界各地の、家庭のキッチンで、家族のためにつくられるような、日々の生活の中から生まれる知恵を取り入れたドリンクをつくる」ということ。
キリンビバレッジの社内でも独自路線をいっているこの『世界のキッチンから』は、それまで社内のデスクで商品開発をしていたところから、イタリア、アマルフィをはじめ、ハンガリー、スペイン、ドイツなどのヨーロッパ、台湾、マレーシアなどアジアの国々、そのほか、メキシコ、キューバ、リトアニアなどの世界の都市に飛び立ちました。その数約20都市。キッチンの数は約100。
この取材に帯同したのが世界の生活文化を写真でおさめている写真家の高橋ヨーコさん。本書『世界のキッチンから 商品開発と写真の関係』はそんな高橋ヨーコさんが約12年間の取材で撮りためた、膨大な枚数の写真を、厳選し、国ごとにまとめた写真集です。
本書の最後の方にこのプロジェクトに携わっているメンバーたちがプロジェクトを振り返っている文章が載っていますが、そこにもあるように高橋ヨーコさんは撮影時に特別な照明などの機材を持ち込まず、その場所が持つ自然光を頼りにありのままのキッチンの様子を撮影していくそう。様々な国のキッチン周りの写真が載っていますが、どれも着飾っておらずありのままの感じが心に響きます。
この一冊に目を通し終える頃には、ちょっとした旅に出た気分になることでしょう。
そして、世界というものは“キッチン”からできているということに気がつくはずです。
高橋ヨーコ
写真家。世界の生活文化をフィールドワークするように撮影旅行を続けている。特に旧ソ連や東欧へは精力的に出掛け日常風景を記録している。その静謐な写真表現と独自の色彩感覚によるカラー写真により、国内外で高く評価を受けている。2010年よりカリフォルニアベイエリアへベースを移し、現在はサンフランシスコで活動中。ビジュアルジャーナル『Ontario』を不定期で発行