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フォンターネ 山小屋の生活

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フォンターネ 山小屋の生活 / 著者・パオロ・コニェッティ、訳者・関口英子 / 新潮クレストブックス



本書は、イタリアの作家パオロ・コニェッティが、イタリアはヴァッレ・クラカワー自治州の標高1900メートルの山中にある小村ブリュソンの「フォンターネ」という集落に佇む一軒の山小屋を借り、静寂の中、自らの苦悩と素手で向き合った記録です。

著者のパオロが、首都のミラノや大都市ニューヨークでの生活を経て、執筆する筆が進まなくなってしまった30歳のある時、本だけを携えてアルプスの山麓の小屋にこもります。


物語は春、夏、秋と3つの季節が移り変わる山の自然の描写とともに、パオロのその時の心境がとてもリアルに、そして詩的に描かれています。


一冊に共通して語れるテーマは『孤独』、『自然』、『内省』です。

『フォンターネ』にたどり付き、喧騒のない静寂さや孤独を楽しむはずが、逆に木々が風にたなびく音や野生動物たちの足音などが都会にいた頃より鮮明になり寝付けなかったり、野生動物たちの生と死に直面し狼狽える体験などの心境が素直に綴られているので、手放しに「大自然万歳!」といったように”都会”との二項対立軸として大自然が描かれていないので、読み進めているうちにパオロと一緒に山や自然の中での生活を営んでいるような感覚となっていきます。


そしてある種、人付き合いを避け山に篭ったのですが、たまに出会う人々との交流は深く信頼感に満ちたものなのだと感じされられます。

他人と自分を照らし合わせ、自分の似たところや違いを自覚していく一連のプロセスが著者の優れた情景描写によって語られていますが、この埋めることのできない相手との境界線、それが唯一無二の“自分”なのだということにも気づいているかのようでした。


夏の朝や秋の夜長などのお供に。

ページをめくれば涼やかな山々の風が吹き渡ることでしょう。


字面を辿っているととても深く穏やかな気持ちになれるそんな一冊になっています。

 

 

パオロ・コニェッティ
1978年ミラノ生まれ。大学で数学を学ぶも中退、ミラノ市立映画学校で学び、映像制作の仕事に携わる。2004年、短篇集『成功する女子のためのマニュアル』で作家デビュー。2012年短篇集『ソフィアはいつも黒い服を着る』でイタリア文学界の最高峰「ストレーガ賞」の最終候補となる。初の本格的な長篇小説となる『帰れない山』で、「ストレーガ賞」と同賞ヤング部門をダブル受賞した。

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