暮らしの民藝 選び方・愉しみ方 / 著者・萩原健太郎 / エクスナレッジ
“モノ”が語る情感
人が手を使って作っている食器をはじめその他日用品を自分の暮らしの中で取り入れはじめたのはホンの十年前くらいからのように思います。それまではある程度、規格化や量産化された、いわゆるそれでなくても良いモノというものばかりに囲まれて生活していました。
それが変化してきたきっかけが北欧への取材をきっかけに買付しはじめたヴィンテージのうつわや花器を実際の暮らしの中に取り入れたりしたこと。そうしてみると、なんだかそこに流れる空気感というものが変わってきたように思えたのです。そしてそうこう数年するうちにヴィンテージだけでなく、“これから”のヴィンテージになるようなクラフトマンたちの作るモノに興味が湧きはじめてきて、そのモノを買付して、実際に手で作っている方たちの話を聞いて、それを雑誌にまとめることもやっていきました。そうしたモノを暮らしの中で使っているとやっぱり愛着は湧くし、なんだか心まで満たされていく気持ちになるのです。きっとそのモノを通しての背景などに思いを馳せているので、こころがいつも以上に自由になっているのだと思います。
さて、本書『暮らしの民藝 選び方・愉しみ方』は民藝をどのように暮らしの中で使って愉しんでいるのかということをまとめた一冊。ジャーナリストとして国内外で活躍している萩原健太郎さんが暮らしのなかに民藝を上手に取り入れている
哲学者、編集者、デザイナー、料理研究家、民藝店の店主など14組の愛用の民藝の品々と生活スタイルを紹介します。
本書で紹介されている方たちの共通点は、モノに愛着や愛情を持って接しているということ。機能や効率性、コストパフォーマンスなんていう言葉とは縁遠いざらつきやノイズを愉しんでいる様子、そしてそのモノがあることによって行為や所作の中に情感が纏ってくることが写真や文章を通して伝わってきます。
民藝というとその道があるようで敷居を高く感じてしまうかもしれません。
大丈夫です。
親しみやすくこころが揺れ動いたモノからはじめてみてください。
そんなきっかけの一冊に。
<目次>
鞍田崇さん(哲学者、明治大学理工学部准教授)
ルーカスB.B.さん・バルコ香織さん(雑誌『PAPERSKY』編集長)
竹中紘子さん(料理家)
鈴木善雄さん・引田舞さん(商業施設「CASICA」プロデューサー)
豊村昭子さん(雑貨店「WOLK」店主)
高井鉄郎さん・藍田留美子さん(山ぶどう細工職人、黒板職人)
松崎薫子さん(編集者)
山本桂諒さん・愛子さん(民宿・蕎麦屋「山本屋」当主)
安土草多さん(ガラス工芸作家)
朝倉圭一さん・佳子さん(民藝店「やわい屋」店主)
服部滋樹さん・知香さん(graf代表、クリエイティブディレクター)
多々納真さん・昌子さん・朋美さん(出西窯代表、出西織代表)
須波隆貴(いかご職人)
倉敷本染手織研究所(民藝と染織を学ぶ女学校)
萩原 健太郎
東京・大阪を拠点に、北欧、デザイン、インテリア、手仕事などの領域の執筆・撮影、講演、プロデュースを中心に活動。