アインシュタイン: 時間と空間の新しい扉へ / 著者・ギンガリッチ・オーウェン、ジェレミー バーンスタイン、翻訳・林大 / 大月書店
何かを知りたい気持ち
子どもの時になんでも何で?何で?と言っている友達がいました。けれどお母さんたちの間では、少しだけその子は面倒がられていたのを側から見ていて、あんまり何で?何で?と人に聞き回るのは良くないんじゃないかなと子どもごころに感じていました。今でこそ、世の中を少し穿った見方をしている方なので、何で何だろう、どうしてそうなったんだろうと分析官のごとく思考実験することが癖になっていますが、子どもの時にそうした経験をしていなかったら、もっと違った世界が広がっているのだろうなと感じ、自分の子どもから何で?と問われれば、分からないなりに面倒くさがらずに一緒に考えてあげたいなと思うのでした。
本書は誰もが知っている物理学者で「特殊相対性理論」「光量子仮設と光電効果」「ブラウン運動」という、20世紀の物理学の基礎となった三つの重要な概念を発見したアルベルト・アインシュタインの人生を辿った、いわば伝記のような一冊です。多くの図版・写真とわかりすい記述で、アインシュタインの知性とイマジネーションから湧き出た革命的な理論と、魅力あふれる人物像、その生涯をコンパクトにまとめた明快な入門書になっています。
本書の序盤でも触れられていますが、幼少期に手にした方位磁針が何かの“チカラ”によって指し示されているという不思議さに何で?と思ったところから自然科学・物理学の芽が生まれたのだというところがターニングポイントだったのだと感じられます。
自らも何かを知りたいという気持ちを大事に持っていよう、そう感じさせてくれる一冊です。
<目次>
はじめに 私はいかにしてアルベルト・アインシュタインに出会わなかったか
第1章 若きアインシュタイン
第2章 奇跡の年
第3章 量子の不思議な物語
第4章 アインシュタイン教授の生涯でもっともうまい考え
第5章 アインシュタインの宇宙論
第6章 量子のもっと不思議な物語
第7章 マーサー・ストリート一一二番地
第8章 アインシュタインの遺産
おわりに 私はいかにしてアインシュタインに会ったか
ギンガリッチ・オーウェン
ハーヴァード大学教授(天文学・科学史)。スミソニアン天文物理観測所上級名誉天文学者。2006年夏のIAU(国際天文学連合)惑星定義委員会では議長を務めた
バーンスタイン・ジェレミー
スティーブンス工科大学教授(物理学)。雑誌「ニューヨーカー」の科学ライターも長く務めた。ポピュラー・サイエンスの著書も多く、アインシュタイの伝記『アルバート・アインシュタイン』は「National Book Award(全米図書賞)」ノミネート
林大
1967年生まれ。翻訳家