ことばの焚き火 ダイアローグ・イン・デイリーライフ / 著者・大澤真美、 中村一浩、植田順、野底稔 / サンクチュアリ出版
対話という道標
誰かと何かについて話していると、それまでの自分の考えから出てきそうもないアイデアや意見がふと出てくることは誰しも経験があるはずです。なぜ今までそんなことを思いつかなかったのだろうと不思議に思うかもしれませんが、それは対話を通してあなたの中に眠っている想いや気持ちなどがしまってある宝箱が開かれたということなのでしょう。でも難しいのは、その鍵をあなたは持っていないということ。つまり相手の導きによってそのアイデアや意見が引き出されているということなのです。これはとても大事なことでもあるのですが、対話にはそうした不思議な作用があります。これと似たようなことで云えば、ジャズのセッションとも近いかと思います。ある演者が即興のアドリブで何かを仕掛けたリズムに対して、仲間の演者が応戦して全体のリズムがセッションしていく。最初のアドリブなしに、そしてそのアドリブに対するリアクションがなければ成立するはずのないグルーブ感が生まれてくるはずです。それがLiveであり、生きているということなのではないのでしょうか。
本書は対話というキーワードを軸に、4人のジャンルの異なる著者が対話ということについて対話をしているようなそんな一冊になっています。互いに異なる観点から対話を考えているのですが、それらが集積することで対話というものの全体像が顕になってくるようです。それはまるで焚き火を囲んで、薪をくべているような状況に近いのかもしれません。誰かのくべた薪で火が大きくなったり、きれいな形になったりと。この本に出てくる「ことば」はそんな薪の役割なのでしょうね。
変化の大きい世の中では、考えるよりもまず感じることが大事。
言葉は自分と繋がる手段。
ここに出てくる「ことば」は、きっとあなたの人生という炎をすてきにしてくれる薪となってくれることでしょう。
<目次>
チェックイン 焚き火に薪をくべながら、ゆっくりことばを出してみよう。
対話の海にダイブする―対話の根底に流れるもの(この本がいま、あなたの手の中にあるということ;わたしたちは誰しも、いつも時代の先端にいる ほか)
対話するってどういうこと?(対話とは何だろう?;対話を始めるまえに ほか)
対話のある生活(境界が消える;結界を張る ほか)
湧き上がり、流れていく対話(面倒くさいことは、面倒くさいと言う;生きた言葉、いまの言葉 ほか)
「ことばの焚き火」制作ドキュメント 対話的なプロセスで本をつくり、広めていく最初の一歩の「群像劇」
エピローグ アワからウズへ―自分の言葉を失ったくにの物語
チェックアウト もっと対話を知りたい人のために
大澤真美
作家・アーティスト。「PRHYTHM」をコンセプトに、人が持っている本来の躍動 (リズム)を世界に乱反射させ、生命を駆動させるアクティビスト、渦を起こす人。ドミニカ共和国で3年間暮らした後、通訳・翻訳、研究員、日本語教師、看護師・保健師などでを経て、現在、対話のプログラムや場づくり、執筆活動など、世界に渦を起こす様々な活動を実践。母、娘とオンナ三世代で三浦半島の葉山町に在住。
中村一浩
ミスミ、リクルートでの事業創出を経て、森のリトリートでの体験をきっかけに 独立。「感じる」力をいかす事業構想、「本来の自分」を取り戻す対話(ダイアローグ)、「ゆたかさ」のある社会を醸成するWell-being(しあわせ)、それぞれ をテーマに事業を立ち上げる。現在は慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科にて、「対話(ダイアローグ)」の可能性を世界中の人に届けるために、意外と真面目に研究を進めている。
植田 順
2001年から経営コンサルタントの仕事に従事。複数のコンサルティング会社 を経て、2013年よりNTTデータ経営研究所に勤務。国内企業向けに、ワークショップを活用したビジョン策定、組織開発、サービスデザインなどを行う。その中で“タイワ"(対話)に可能性を感じ、企業内での“タイワ"の企画・実施・推進を行っている。対話を新しい社会のインフラにするための仲間を募集中。
野底 稔
上智大学理工学部卒。トリンプ・インターナショナル・ジャパン、ミスミを経て、ビジネス・ブレークスルーで企業内リーダー育成事業の責任者、子会社取締役などを担うなかで対話と出会う。現在は無所属で活動しつつ、駒澤大学仏教学部に在学し、禅を学ぶ。ロングトレイルを身軽に歩くハイキング、禅、対話などに通底する 「手放すこと」を探求中。共著『ウルトラライトハイカー』(山と渓谷社)。