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デザインのデザイン

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デザインのデザイン / 著者・原研哉 / 岩波書店


原研哉からの問い


良いデザインとはなんなのだろうか。

本書『デザインのデザイン』を読んでそう頭の中にぼんやりと浮かびました。

初めて自分がデザインというものに触れたのは、2010年に北欧・フィンラインドを旅した際に年に一度開催されるヘルシンキデザインウィークというイベントを見たことだったように思います。北欧諸国のデザインブランドが一同に集まり、プロダクトの洗練さと素朴さが相まった不思議な感覚は日本の古道具などとも似ている佇まいだったのだと後から気付かされたのでした。

そこからイベントを企画したり、雑誌を作ったり、プロダクトをディレクションしたりと、様々なメディアを通してデザインというものを側で意識しつつ生み出してきましたが、改めてデザインとはなんなのかと問われるとゴニョゴニョと歯切れの悪い言葉しか出てこなさそうです。


本書『デザインのデザイン』は、日本のデザイン界を代表するデザイナーの原研哉さんが自らの職能に対しる基本的な問いで、この問いに日々向き合い形として応えようとしている思考をまとめた一冊です。本書の中で原さんは、「デザインは、人間が暮らすことの意味、生きる意味をものづくりを通して解釈していくという意欲」と表現されています。つまりデザインというものの本質を理解するためには何かを生み出すことをしないとなかなか見えてこないのだろうと思いました。では、デザインというものは、そういった限られた方たちの専売特許なのかというとそうではないと思います。誰しもが日々何かを作り出しているからです。あなたが何気なく歯を磨いていることも、お気に入りの靴に足を入れて履こうとしていることも、『何かしていなかったことから、何かをしている』いわば無から有へと変化を加える全ての事柄がクリエーションなのだろうと私は思います。なので、あなたの身の回りで起こっている全てのことにデザインというのは隠れているのです。


そんな日常の中に潜むデザインの中で良いデザインとはなんなのか。

この一冊と一緒にそんな問いを考えてみませんか。



■原研哉さんからのメッセージ

 デザインが囁く,斬新な発想転換のすすめ

 デザインではないものが「デザイン」と呼ばれている.似ているものがそう呼ばれるなら仕方ないが,その本質とは逆のものが「デザイン」と呼ばれはじめると心穏やかではない.変わった形の家電製品が「デザイン家電」と呼ばれ,醜い姿の家具が「デザイン家具」と呼ばれる.奇怪なインテリア空間を持つ「デザイナーズホテル」が雑誌の特集になる.

 デザインとはものを作る技術ではない.デザインはものの本質に静かに手を伸ばす試みである.時代が経済やテクノロジーをたずさえて前に進もうとするとき,繊細な感受性や美意識が犠牲になる.その悲鳴に耳を澄ます技術がデザインである.表層の派手さとは程遠く,そこに関与しているとは気づかれない程に密やかに,精密に,そしてそれゆえに強力に機能するのがデザインである.当初は「それはデザインではない」という書名にしようとしたが,たしなめられてこの書名になった.



■推薦のことば

幾つもの発見がある1冊

デザインについて語れる人ならば,各界にあまた存在するだろうが,デザインのデザインについて語れる人は,現在,原研哉をおいて他にあるまい.彼は,彼が書くべき本をついに書いたのだ.

――原田宗典(作家)



デザインをわかりたい人達へ

「デザインが大切だ,大切だ」と異口同音に言っている人達へ,「わたしはデザインがわかってる」と思っている人達へ,そして「デザインていったいなんなんだ」と真剣に頭を抱えている人達へ.そんな人達はこの本を読めばいい.

――深澤直人(プロダクトデザイナー)







<目次>

まえがき


第1章 デザインとは何か

悲鳴に耳を澄ます/デザインの発生/デザインの統合/20世紀後半のデザイン/規格・大量生産/スタイルチェンジとアイデンティティ/思想とブランド/ポストモダンという諧謔/コンピュータ・テクノロジーとデザイン/モダニズムのその先へ


第2章 リ・デザイン――日常の21世紀

日常を未知化する/アートとデザイン/リ・デザイン展/坂茂とトイレットペーパー/佐藤雅彦と出入国スタンプ/隈研吾とゴキブリホイホイ/面出薫とマッチ/津村耕佑とおむつ/深澤直人とティーバッグ/世界を巡回するリ・デザイン展


第3章 情報の建築という考え方

感覚のフィールド/情報の建築/長野オリンピック開会式プログラム/病院のサイン計画/松屋銀座リニューアルプロジェクト/情報の彫刻としての書籍


第4章 なにもないがすべてがある

田中一光から渡されたもの/無印良品の起源と課題/「が」ではなく「で」/WORLD MUJI/EMPTINESS/地平線にロゴを置く/ロケーション――地平線を探して


第5章 欲望のエデュケーション

デザインの行方/企業の価値観の変貌/集約されるメーカーの機能/マーケットを精密に「スキャン」する/欲望のエデュケーション/日本人の生活環境/日本という畑の土壌を肥やす/デザインの大局


第6章 日本にいる私

日本をもう少し知りたい/『陰翳礼讃』はデザインの花伝書である/成熟した文化の再創造/自然がもたらすものを待つ――「雅叙苑」と「天空の森」/世界の目で日本の上質を捉え直す――「小布施堂」/何もないことの意味を掘り下げる――「無何有」/たたずまいは吸引力を生む資源である


第7章 あったかもしれない万博

初期構想と「自然の叡智」/エコロジーに対する日本の潜在力/森の中に何があったのか/デザインのパースペクティブ/身近な自然や生命をキャラクターに/自己増殖するメディア/終わらないプロジェクト


第8章 デザインの領域を再配置する

世界グラフィックデザイン会議/デザイン知の覚醒/デザインと情報/情報の美へ/生命科学と美/情報とデザインをめぐる3つの概念/VISUALOGUE/徒歩で再び歩き出す世代に


あとがき





原研哉

1958年生まれ.グラフィックデザイナー.日本デザインセンター代表.武蔵野美術大学教授.

デザインの領域を広くとらえて多方面にわたるコミュニケーションプロジェクトに携わる.長野オリンピックの開・閉会式プログラムや,2005年愛知万博のプロモーションにおいては,日本文化に深く根をおろすデザインを展開.商品デザインでは,ニッカウイスキー,AGFをはじめ,日本各地の酒と米の仕事を手掛けている.また,松屋銀座リニューアル計画では,空間からグラフィックを横断する複合的なデザインディレクションを実践.梅田病院サイン計画では触覚性を意識した新しいコミュニケーションの可能性を示した.一方,展覧会「建築家たちのマカロニ展」「リ・デザイン――日常の21世紀展」では企画者として日常への視点を示唆している.「リ・デザイン展」は現在,世界各都市を巡回しており,同展で2000年世界インダストリアルデザインビエンナーレ(インダストリアル・グラフィック両部門)大賞,および2000年度毎日デザイン賞を受賞した.2001年より無印良品のボードメンバーとなり,その広告キャンペーンで2003年度東京アートディレクターズクラブ賞グランプリを受賞.書籍に関連するデザインでは講談社出版文化賞,原弘賞,亀倉雄策賞,一連のデザイン活動に対して日本文化デザイン賞を受賞するなど内外で数多くの賞を受賞している.

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