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DEEP LOOKING 想像力を蘇らせる深い観察のガイド

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DEEP LOOKING 想像力を蘇らせる深い観察のガイド / 著者・ロジャー・マクドナルド / AIT Press


真に見るとは?


肌感覚として歳を重ねていくにつれて、集中力が落ちてきたように思う方もいるのではないのでしょうか。幼い頃は何かに熱中したり、我をも忘れて外遊びに没頭した記憶もあることでしょう。

2001年にニューヨークのメトロポリタン美術館が発表した、美術館を訪れた鑑賞者がひとつの作品にかける時間は、たったの27秒だったという驚きのデータが発表されました。今から数十年前のデータなのでスマートフォンなどのデジタルディバイスが普及した昨今はさらにその時間は短くなったと思うかもしれませんが、意外と大体同じだそう。それは美術館の空間の作り方や来場者の回転数をどのように高めていくかということを重視してしまったからだそうです。


さて本書『DEEP LOOKING 想像力を蘇らせる深い観察のガイド』は著者でインディペンデント・キュレーターでNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ(AIT)副ディレクターのロジャー・マクドナルドさんが、古来の人類が持っていた『観察力』についてアートの視点からフォーカスを当てていく一冊です。タイトルにも掲げられている『DEEP LOOKING』は深く観察すること。ファスト化、効率化した社会では、先に挙げた美術館のように来場者の回転数など数字で測れることにばかり目が向けられてしまい、鑑賞し感じ取る人間本来の感覚がが著しく低下してきていることを自覚としても感じられます。

本書で観察とは自分の内側の世界と外側の世界の相互作用から生まれるものというニュアンスが書かれていますが、最初に書いた集中力についても大人になるにつれ外側の流れる時間に体や頭が反応してしまい、本来の自分の内側に流れるリズムやテンポに沿っていないことから生じてくるということが本書から読み取れました。


さて、この深い観察である『DEEP LOOKING』ですが、デザイン思考のように決まったメソッドはありません。

この一冊をガイドに、『DEEP LOOKING』してみるのはいかがでしょうか。



<目次>

序章 なぜいま「観察」なのか──再発見される肉体回帰のアプローチ

第1章 見ているようで、見ていない──私たちはいかにして観察力を失ったか

第2章 革新を生んだ観察者たち──6人のアーティストに見る深い観察の物語

第3章 深い観察のためのプロトコル──現代によみがえる秘密結社の流儀

第4章 練習してみよう!──紙上からはじめるディープ・ルッキング

第5章 「適応」のための観察──危機の時代を生き抜くために



ロジャー・マクドナルド
東京生まれ。8歳から英国で教育を受ける。大学で国際政治学を学び、オーストリアにある欧州平和研究センター(European University Center for Peace Studies)で半年間、平和学を学ぶ。その後、カンタベリーにあるケント大学大学院にて宗教体験と神秘学を専攻、サイケデリック文化や禅と芸術について研究を行う。博士課程では『Outsider Art』の著者ロジャー・カーディナルの指導のもとモダンアート絵画と神秘主義(特に禅とアメリカの画家マーク・トビー)について研究する。この頃(1990年代半ばから末にかけて)、広島県にある神勝寺の国際禅道場にて2年連続で夏の修行をしたほか、シャーマニズムの研究者テレンス・マッケナのワークショップにロンドンで参加する。大学院修了後、1998年に日本に戻り、インディペンデント・キュレーターとして活動を開始、アーティストたちとともに展覧会やイベントをつくる。2001年に仲間たちとAITを設立、翌年にNPO認定される。AITではおもにアートの学校MAD(現・TAS*)のプログラム・ディレクションを行う。また、2003年から2013年まで東京近郊の美術大学で非常勤講師として教鞭をとっていたほか、2001年の第一回横浜トリエンナーレでアシスタント・キュレーター、および2006年のシンガポール・ビエンナーレでキュレーターをそれぞれ務める。また、2017年にはアウトサイダー・アートの大規模展覧会「ミュージアム・オブ・トゥギャザー」を東京でキュレーションする。そのほか、さまざまな展覧会やアート・イベントのキュレーターを務める。2010年に長野県佐久市望月に移住し、2011年に「フェンバーガーハウス」を設立。以降、館長を務めながら合宿やワークショップをリードしている。このときから「ディープ・ルッキング」の実践を始め、深い鑑賞を促す「ひとり絵画鑑賞部屋」やグループで深い音楽鑑賞を行う「レコード・サンドウィッチ・クラブ」を開催する。また、この時期から自身でもロンドンのナショナル・ギャラリーや東京国立博物館の東洋館で深いアート観察を実践し、その強烈な可能性に目覚めていく。2016年には観察実践集団「ESTAR(SER)」の活動に加わり、アメリカとブラジルで行われた国際会議にも参加。また2018年夏には、アメリカ西海岸にあるカウンター・カルチャーの聖地エサレンで、アーティストのアンナ・ハルプリンがリードする最後の夏のワークショップに参加。そしてこの年から気候危機について研究しはじめ、2019年に地元・望月地域の市民運動グループ「MOACA」を仲間たちと設立。現在、地域や学校で気候危機や適応に関してのレクチャーとディスカッションを積極的に行っている。2021年、「ザワメキアート」展キュレーター。また、同年より多津衛民芸館理事を務めている。

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