父・堀内誠一が居る家 パリの日々 / 著者・堀内花子 / カノア
アートと文化にあふれた堀内家の暮らし
1970~1980年代の日本の雑誌カルチャーと絵本文化を牽引したアートディレクター堀内誠一は、絵本の仕事に専念するため1973年に単身で渡仏、その後続いて家族もパリへ移り住み、本書は娘の花子さんが記したフランス時代の思い出と子ども時代の記憶がまとめられた一冊となっています。
なにせ、その時代のカルチャーの先駆的な存在だった堀内誠一のご親族というわけで、安野光雅、澁澤龍彦、谷川俊太郎、矢川澄子…、と錚々たる顔ぶれが堀内家に訪ねてくるエピソードや、13歳でパリの女学校に通い、様々なカルチャーショックを受けた体験などが綴られており、「平凡な家庭で生まれた私にはどう間違っても経験できない人生だ…」と思いながらも、そんな絶対に味わうことのできない人生に本を通して疑似体験する、というのも面白いものでした。
巻頭・巻末に掲載されている堀内誠一の作品や堀内家の写真を眺めながら読んでいると、その当時のパリの雰囲気が伝わってきたり、花子さんの文章の情景がより鮮明に浮かんできたりします。
1970年代のフランスの空気を感じたい方、雑誌カルチャーや絵本が好きな方は、知っている人物、作品名がたくさん出てくるので、きっと楽しく読めると思います。
それにしてもこんな人生、艱難辛苦があることも承知で一度体験してみたいものだなぁ。
<目次>
パリ到着
学校がはじまる
恐怖のカテシズム
給食の時間
父が居る家
苦手なお使い
マルボロの思い出
父はマンガ好き
父は映画好き
家族で観た映画
別世界の高校生活
そして放課後
「音」が好き
旅がはじまる
パリのお客様
家族同行の取材旅行
安野さんの来訪
瀬田さんに宛てた「カスティリア讃歌」
澁澤さん
奈良原クンなら…〔ほか〕
堀内花子
堀内誠一の長女。1974年から約6年間、家族とともにフランス・パリ郊外で暮らす。メーカー勤務を経て、通訳・翻訳業に従事。堀内事務所代表