宇宙樹 / 著者・竹村真一 / 慶應義塾大学出版会
人間と植物の共進化にむけて
宇宙樹はつねに私たちの身のまわりに現在している。
春になるとあたりまえに花が咲くのも、植物という形をかりた宇宙的な知性のあらわれだ。人間と植物がともに花開くための新たな文明の尺度を提起する。
物事の真理を覗いてしまった!そんな感覚になります。
気鋭の文化人類学者の竹村真一さんが、2004年に著作した一冊です。
現在でこそ、自然との共生が叫ばれていますが、20年ほど前にご自身がインドのアーユルヴェーダの治療を受けたエピソードなどから目には見える植物や樹木の神秘性に惹かれたところからスタートし、目には見えない事象や感覚を文化人類学者ならではの視点で言語化、分析をされています。
特に植物を使った『染色』と『薬草』の共通点が語られている部分は、目から鱗が落ちるほど。今まで繋がっていなかった物事の本質同士が緩やかに繋がっていることを実感できる内容になっています。
それは人間と植物も同じことで、全てが緩やかに繋がっているのでしょう。
つまり宇宙を漂う同じ生命体ということ。
現代社会の問題は、物事をはっきりと分けてしまうことにあるのだろうなとそんなことをこの一冊を読んで頭にぼんやりと思い浮かんできました。
【目次】
序 「花見」の原風景
第1章 色彩の時間論
第2章 宇宙的器官としての樹木
第3章 「工」の思想/森の思想
第4章 パートナーの木
第5章 人間と植物の共進化にむけて
終章 現在する宇宙樹
竹村 真一
1959年生まれ。東京大学大学院文化人類学博士課程修了。現在、京都造形芸術大学教授。生命科学や地球学を踏まえた新たな「人間学」を構想するかたわら、独自の情報社会論を展開。ウェブ作品「センソリウム」や「触れる地球」、地域情報システム「どこでも博物館」など、自ら実験的なメディア・プロジェクトを数多く手がける。 主な著書に『呼吸するネットワーク』(岩波書店)、『22世紀のグランドデザイン』(慶應義塾大学出版会:編著)、『ひとのゆくえ』(求龍堂:編著)など。