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続 おいしい景色

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続 おいしい景色 / 著者・坂田阿希子、皆川明 / スイッチ・パブリッシング




料理と器




僕が北欧を行き来していた2010年から2020年の間で都市の中で劇的に変化したことは、北欧料理に対しての認識のように思う。2010年以前のそれは、褒められたものではなく、“街中でビール片手にホットドックを頬張る奴ら”と外の国から揶揄されるような、食に関しての関心の低さと極寒の大地ならではの食材の乏しさが顕著だったように思う。

けれど食と文化と芸術を掛け合わせた『ガストロノミー』という言葉が知られるようになり、北欧デザインの本場であることもそうさせたのか、食をデザイン表現として捉え、次第に世界一のレストランnomaに代表されるようなレストランが世界に名を轟かせるに至った。以前は食の都、パリという印象が強かったが、料理人たちの間ではパリではなく、デンマークの首都コペンハーゲンを目指していた時期だったのではないだろうか。

街を定点観測していると面白いことがわかる。北欧を訪ねるたびにnomaなど有名どころのガストロノミーで修行した料理人たちが、至る所でそれぞれのビストロやレストラン、さらにはジャンルの少し異なるカフェやバーを展開し始めたのだ。そして気づくとビールとホットドックという印象はどこへやら、料理人だけでなく、ジャーナリストたちもそして旅人たちも、北欧の食という文脈で注目をし始め、いつしか食のムーブメントの震源地へと変わっていったのだった。

こうしたレストランが増えていくにつれて、周辺のカルチャーへの影響も少なからず大きかった。特筆すべきなのが、それらの料理を提供するためのキャンバスといっていいであろう、器類に料理人たちがこだわり始めた。そのこだわりはというと、食材を農家さんのところに直に見に行って仕入れるかのように、陶芸家のところに出向き、自身の料理表現をプレゼンテーションして、そのレストランオリジナルの器を認めてもらうほど。レストランが有名になるにつれて、あのレストランで使われている器を作っている陶芸家、といったように連鎖的に知名度が上がっていくということが自然発生的に生まれていたのだった。

改めて、食というものは人間生活全てのものの根源にあることを思い知らされた。


さて、本書『続 おいしい景色』は料理家・坂田阿希子さん(代官山KUCHIUBE)とデザイナー・皆川明さん(ミナ ペルホネン)の料理と器のエッセイ本。2022年4月刊行の『おいしい景色』に続く第2弾。坂田阿希子の料理に合わせて皆川明が器を選び、景色をつくる。

一品の料理に対して、皆川明さんはデザインや器視点でそして坂田阿希子さんは料理家の視点でエッセイが描かれている。20のメニューについてのエッセイ・写真・レシピで構成される一冊なのだが、内容はお二人の主観によるもののはずがどこか自分の中の何かが揺り動かされているような不思議な感覚を抱くことだろう。

料理本としても重宝しそうだ。




<目次>

はじめに 坂田阿希子 3

エビフライ 紺野乃芙子さんのやちむんの皿 8

酸菜白肉鍋 安藤雅信さんの深い器 16

ミモザサラダ 岩田圭介さんのお皿 24

フルーツポンチ フランスアンティークのガラスの器 32

ガスパチョ 小澄正雄さんの羽反鉢 40

汁なし担々麺 三谷龍二さんの白漆椀 48

きゅうりのピクルス ピーター・アイビーさんのジャー 56

ロールキャベツ 皆川明のフォレストココット 64

新米おにぎりと豚汁 紀平佳丈さんの蓮弁皿 72

ローストチキン GOGデザインのアラビアのプレート 80

レモネード レナタ・ヤコヴレフさんのグラス 88

ボルシチ 大嶺實清さんの鉢 96

いちごのキューブサンド 日本の古いフリルの平皿 104

ポークカツレツ さざ波模様の黒いガラス皿 112

クラブハウスサンド 安藤雅信さんと皆川明の“風のお皿” 120

梅角煮 大嶺實清さんの水玉の器 128

トマトサラダ サンフランシスコで買った真鍮の大皿 136

レモンのパスタ 高橋禎彦さんの吹きガラスの平皿 144

ステーキフリット 小山剛さんの漆の平皿 152

フルーツケーキ ロイヤルコペンハーゲンの桃の器 160

おわりに 皆川明 170





坂田阿希子
料理家。料理研究家のアシスタントを経て、フランス菓子店、フランス料理店で経験を積み独立。洋食を中心に幅広いジャンルの家庭料理や洋菓子を得意とする。2019年から代官山ヒルサイドテラスで「洋食 KUCHIBUE」を営業。同店では料理教室も開催している。2022年には地元の新潟県見附市にお菓子工房「BONJOUR KUCHIBUE」をオープン。『わたしの料理』(筑摩書房)など料理に関する著書多数。


皆川明
デザイナー。ファッション・テキスタイルブランド「minä(minä perhonen)」を設立。日常に寄り添う普遍的なデザインを目指しものづくりをおこなう。2019年から始まった『ミナ ペルホネン/皆川明 つづく』が東京、兵庫、福岡、青森、台湾を巡回後、韓国にて『minä perhonen design journey: the circle of memory』を開催。2024年には皆川のデザインと繋がりが深い北欧の、スウェーデン国立美術館でも展覧会『DESIGN MEMORY』が開催された。

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