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計算する生命

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計算する生命 / 著者・森田真生 / 新潮社


数というロマン



数字という概念が認識できた時の記憶は、自宅の浴槽だったように思います。

それはよく父と一緒にお風呂に入っている時に60秒を一緒に「イーチ、ニーイ、サーン、シーイ」といったように、はじめは父の発する音を追いかけるように真似ているうち自然と身についていったようです。それが次第にイーチが1でニーイが2、サーンが3でシーイが4と認識し、街で見かける数字の意味や概念も次第に理解できるようになったのです。

初めて海外に行った時に英語もままならない中、当たり前ですが驚き安心したのが数字が万国共通で読めるということ。空港で見る文字は現地の言葉で表示されているので訳が分かりませんが、数字だけが唯一難解な謎を紐解く微かな手がかりでした。なので、他の人にとってはたかが数字であっても、自分にとってはとても意味深いものに思えて仕方がなかったのです。


さて、本書『計算する生命』は独立研究者の森田真生さんが『新潮』に連載していた文章をまとめて編纂した一冊になっています。心を形作る「言語」と、身体を突き動かす「生命」、そして数学の発展を駆動してきた「計算」を軸に、数を数える行為から、数学の概念が構築されていく過程を丁寧に分かりやすくまとめています。

古代人が粘土や指を使って数を数えていたころから、現在ではスマートフォンに代表されるように表向きは計算が組み込まれていることを感じさせないものによって動かされている時代に変化していく中で、計算という行為が、人間が成長・発展する過程において重要な役割を担ってきたことは揺るぎない事実です。その過程においてどういった数学者が計算や数式に意味や思いを込めていたのかということを感じられる一冊です。


デジタル化が進んでしまっている現在。

私たちはともすると、数を数え直すところから考え直す必要があるのかもしれません。湯船で大きな声で復唱していた時のように。




<目次>

はじめに


第一章 「わかる」と「操る」

「わかる」と「操る」/物から記号へ/算用数字が広がる/図から式へ/0から4を引くと?/数直線の発見/虚数」の登場/不可解の訪問


第二章 ユークリッド、デカルト、リーマン

I 演繹の形成

古代ギリシア数学の「原作」に迫る/演繹の代償

II 幾何学の解放

『原論』とイエズス会/デカルトの企図

III 概念の時代

直観に訴えない/リーマンの「多様体」/仮説の創造


第三章 数がつくった言語

『純粋理性批判』/なぜ「確実」な知識が「増える」のか?/フレーゲの人工言語/概念の形成/心から言語へ/緻密な誤謬/人工知能へ


第四章 計算する生命

純粋計算批判としての認知科学/フレーゲとウィトゲンシュタイン「/純粋な言語」の外へ/規則に従う/人工知能の身体/計算から生命へ/人工生命/耳の力学/go with the flow


終章 計算と生命の雑種ハイブリッド

計算される未来「/大加速」の時代/ハイパーオブジェクト/生命の自律性/responsibility


あとがき


註・参考文献


森田真生
1985(昭和60)年東京都生れ。独立研究者。東京大学理学部数学科を卒業後、独立。京都に拠点を構えて研究のかたわら、国内外で「数学の演奏会」「数学ブックトーク」などのライブ活動を行っている。2015(平成27)年、初の著書『数学する身体』で、小林秀雄賞を最年少で受賞。他の著書に『数学の贈り物』、絵本『アリになった数学者』、編著に岡潔著『数学する人生』がある。

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