配色事典―大正・昭和の色彩ノート / 著者・和田三造 / 青幻舎
色の拠り所
クリエイターたちと会話をしていると、特に意識していることが作品全体の完成された時に感じる色の感覚が挙げられるように思います。それは一種類一種類色を選んでいくというよりも、その空間ないし物体に纏う色が出揃った際に感じられる“何か”を見ているのだなと思われます。特にそれが海外のクリエイターだった場合、日本のその空間や状況から感じられる色のコントラストから生み出される、その“何か”にある種の魅惑を感じ取ってもらえているのだろうと、そう思うのです。
なので、海外のクリエイターへの手土産のために、こちらの『配色事典』を今まで何冊もスーツケースの中に入れ持っていったことが記憶の中にあります。本を手渡し、中のページをめくってもらうと、その配色のパターンが美しく並ぶ様子に毎度必ず訪れる驚きの表情が忘れられません。さらに色の名前が豊富にあること、そして日本独自の呼び名などを説明すると、とてもポエティックなものなのね、ということで何だかこちらが徳を積んだような錯覚にさえ陥ることができるわけです。私としてはその時に対峙しているクリエイターと信頼関係を築いていきたい手前、この本で何度もクリエイターたちのこころを掴むことができたので、一つの拠り所いやお守りくらいの気持ちとして私はこの本を感じている部分も往々にしてあるのです。
「配色」という概念が一般に認識されていなかった大正から昭和初期において、いち早く色彩の必要性に着目し、『配色總鑑』(全6巻・1933年~)を編纂した和田三造。
それは、わが国の色彩文化のさきがけとも言うべ きもので、具体的な配色パターンを表した画期的な「配色見本帖」でした。本書は名著「配色總鑑」を新装・改訂版として復刻した一冊です。
収録された配色は、大正・昭和の資料のみならず、現代においても活用できる普遍的な感性が読み取られます。
■348通りの配色見本を収録
■すべての色表にCMYK値、カラーチップ 付
■カラーコーディネーター、インテリアコーディネーターほか
あらゆる分野の研究、実用に最適です。