こっそりごっそりまちをかえよう。 / 著者・三浦丈典、絵・斉藤弥世 / 彰国社
おおきな世界は、ちいさな作戦から
街を変えるというと、結構スケールの大きい話になることをイメージする方も多いでしょう。実際にそういうことをしている方も中にはいるかと思いますが、政治や利権なども蔓延っているのでなかなか容易に事は進みません。
本書は設計事務所スターパイロッツ代表の三浦丈典さんが、こうした大きいスケールの街を変えることではなく、小さな一歩をどう踏み出すかというアイデアが43個の切り口によってまとめてくれています。
目次を眺めてみても、『じぶんの部屋と教室がすべり台でつながっているところを想像してみよう』や『すごく古くからありそうなお祭りをでっちあげよう』といったユーモアあふれる視点で街というものとの関わりを考えているトピックが多くあります。
中でも、最初の『じぶんのいえにあだ名をつけよう』という箇所に書いてあった自分の家をほぼ全ての人が「ウチ」という言っていることに疑問を持ち、街を構成する最小単位でもある「いえ」との関係性に目を向けているところがとても興味深いポイントでした。
頭の柔軟としても役立ちそうな一冊です。
ポイントはこっそりとやるところなのでしょう。
子どもたちのいたずらのように!
<目次>
・じぶんのいえにあだ名をつけよう。
・となりのいえが空き家になったらどうやってつかうか作戦を立ててみよう。
・日本中のビルをぜんぶ横に倒して1階建てだけの世界をつくろう。
・ねこの額とうなぎの寝床のどっちが広いか、議論してみよう。
・1日何本の木を見たか、かぞえながら生活してみよう。
・電線を綱渡りしてあの子のいえまで行けるかたしかめてみよう。
・パジャマとサンダルでいえからどこまで離れられるか挑戦しよう。
・建物のなかにいる人全員の年齢を足してみよう。
・1年間で出勤時間が合わせてどれくらいになるか計算してみよう。
・ユニットバスの値段で何回銭湯に行けるか計算してみよう。
・今日1日に何人と話したか、かぞえてから寝てみよう。
・生ごみで走る新しい乗りもののネーミングとかたちを考えておこう。
・東京じゅうの人が全員参加できるマラソン大会を企画してみよう。
・いえに降った雨がどこを流れてどこに行くか、つきとめてみよう。
・いつかじぶんのこどもや孫がおおきくなったときに一緒に住みたいまちをつくろう。
などなど。
三浦丈典
建築家。1974年、東京都生まれ。設計事務所スターパイロッツ代表。工学院大学、早稲田大学芸術学校、横浜国立大学非常勤講師
斉藤弥世
イラストレーター。1983年、静岡県生まれ。2006年、静岡文化芸術大学デザイン学部卒業。大学の卒業制作での絵本制作をきっかけに、イラストレーターをめざす。現在まで、挿し絵などの仕事を行う