呼吸のくふう: 日常生活の中の禅 / 著者・辻雙明 / 春秋社
結局、呼吸だ。
禅と聞いてあなたは何を思い起こしますか?座禅を組んでバシッと肩を『警策(けいさく)』で叩かれていることや精進料理なんかもありますね。私の生活圏内にある禅寺には毎月ありがたい言葉が掲示してあってランニングの時にふと目にかけてその後その言葉を考えながら走ったりもします。こうして考えてみるとそのほとんどが静かな禅寺に紐づいている行為が『禅』のように思ってしまいますが、実は禅というのは生活の中でも取り入れられるよ、という提案が、本書『呼吸のくふう:日常生活の中の禅』でまとめられています。
内容の構成としては布鼓庵・辻雙明老師が残された録音テープを筆録整理したもの、老師ご自身の清書になる「坐禅の仕方とその心得ー日常生活の中の禅の工夫」が掲載されています。
私たちの生活は日々何か目に見えない、それを“時間”といっていいのかもしれませんが、そんなものに追われ慌ただしく過ごしています。心安らぐ静寂の中、精神を集中させるなんていう状態や心境には到底辿り着くことは難しいでしょうが、この本で説かれているように、まずは正しい姿勢、そして呼吸を10秒でも20秒でもしてみるということからスタートしてみるのもありかと思います。
何度も読み返して、日常の中に禅的な姿勢を取り入れたいと思わされる一冊です。
<目次>
●呼吸について
一、「結局、呼吸だ」――堯道老師の一句
二、専念、呼吸ヲ凝ラシ
三、風・喘・気・息――呼吸の四段階
四、息は、臍より出でて還り入って臍にいたる
五、呼吸は肛門でやれ
六、一呼吸の長さ
七、静坐一炷の功
八、真人の息は踵を似てす
九、呼吸と健康
イ、『夜船閑話』の「序」
ロ、貝原益軒『養生訓』
ハ、普通の深呼吸と健康
「呼吸について」の補説
●坐禅の仕方、並びに行住坐臥の中の禅の工夫
A 坐禅の仕方
B 行住坐臥の中の禅の工夫
●坐禅の仕方とその心得――日常生活の中の禅の工夫について
前書き
参考書
大悲心と弘誓願
諸縁の放捨と不断の工夫
飲食・睡眠など――坐禅以前の生活の調節
坐禅の場所、蒲団、威儀などについて
調身の仕方
呼吸について
目の在り方
「非思量」と「内外打成一片」のこと
魔事と正念相続
出定の際の注意と「動中の工夫」について
「住(とどまる)」の時の工夫
「臥」の時の工夫
「行(歩く)」の時の工夫
限りなく高く遠く、而も即今「脚下」の道
死を超越する力
結びの言葉
後書きに代えて
辻雙明
1903年生まれ。東京商科大学在籍中に円覚寺派管長兼僧堂師家・古川堯道老師に参禅、後、嗣法。1949年、46歳の時に那須雲巌寺の植木憲道老師について出家得度、後に還俗。鈴木大拙や西田幾多郎、公田連太郎にも親しく教えを受ける。1963年、不二禅堂の初代師家就任。1991年逝去。著書に、『禅の道をたどり着て』『真の宗教を求めて』『禅・宗教についての十五章』『禅の道をたどり来て 増補版』『禅骨の人々 師と友の群像』『呼吸のくふう 日常生活の中の禅』(以上、春秋社)、『街頭の禅』(東洋経済新報社)。