雨夜の星をさがして 美しい日本の四季とことばの辞典 / 著者・古性のち / 玄光社
またと来ない季節を言葉にとめて
『都会で暮らすより、地方で暮らしていた方が季節を感じる』
これが東京から信州・上田に移住をしてきて感じた感覚の一つです。
春には春の、夏には夏の、秋には秋の、冬にも冬の空気の香りや質感もあるし、またこの4つの季節よりも細かく1日ずつの変化を感じることができる喜びを噛みしめています。
本書は写真家の古性のちさんが四季の美しい日本語を蒐集し、自身の写真と合わせて季節のあわいがまとめられた一冊です。
この一冊に目を通してみると、改めて微妙なあわいの感覚とその繊細さをしっかりと日本人は日本語で表現してきたことに気付かされます。またそれと同時に、自分を振り返ってみても、ほとんどこの本に収録されている美しい言葉を実生活で使うことは乏しく、あとがきにも書かれているように、そもそもその言葉を知らなかったり、今では意味に辿り着けないなんてこともあるようで、美しい言葉たちが今後さらに風化してしまうのではないかと、少し寂しいところです。
少しずつでもいいので、手紙などを書く際には季節の言葉を取り入れてみたい、そんな気にさせてくれます。
パラパラとページをめくって、目に留まった言葉を是非こころにとどめてみてはいかがでしょうか。
2022年12月、冬茜の空を眺めて。
<目次>
1.春 | 雪解けとともに縮こまっていた心がほどけ、万物が「この国に生まれてよかった」と微笑みあう季節
- 春万物オリジナルスペシャルブレンド P10-11
- 春の美しい日本語と写真辞典 P14-45
- 思わせぶりで気まぐれな彼女 P46-47
2.夏 | 茹だるような暑さと矢継ぎ早に繰り出される行事たちのはざまで、忙しなく心躍る季節
- 夏のオノマトペ集 P56-57
- 夏の美しい日本語と写真辞典 P58-97
3.秋 | 世界がゆっくりと眠りにつく準備を始め、どうしようもない切なさに包まれる季節
- 秋の美しい日本語と写真辞典 P100-131
- それからのはなし P132-135
4. 冬 | 暖かな春を待ちながら「人間も冬眠できれば良いのに」とぼやきつつ、夜空の美しさや銀世界につい見惚れてしまう季節
- 冬三日月 P146-147
- 冬の美しい日本語と写真辞典 P148-177
- Snow. P178
- 今朝の冬 P179
5.あとがき
古性のち
1989 年横浜生まれ。写真家、コラムニスト、BRIGHTLOGG,INC 取締役。日本や世界中を旅しながら、自身の写真と美しい日本語を編む作品をSNSを中心に活動する。共著に『Instagram あたらしい商品写真のレシピ(玄光社)』。愛機はFUJIFILM X-T3、Nikon Z 6II。