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空想の補助線――幾何学、折り紙、ときどき宇宙

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空想の補助線――幾何学、折り紙、ときどき宇宙 / 著者・前川淳 / みすず書房



好奇心を突き詰める



ただひたすら折り紙を折り続けたことがありました。幼稚園の頃だったように思いますが、家にたまたまあった大人向けの折り紙の折り方の本を、もちろん文字も大して読めなかったのですが、そこに描かれている展開図を真似ながら自分の手元にある折り紙を折るのです。根っからの几帳面なところもあって左右にできる頂点に揺らぎはなく手に刺さるほど鋭利に研ぎ澄まされるほどに折れた時には、最終的な作品を前にしてとても満足していたように思います。


本書『空想の補助線――幾何学、折り紙、ときどき宇宙』を読むと、あの時折り紙を無心で何かに駆られて折っていたようなことを不思議と思い出されます。


「特殊とも特異とも言いがたいのに、どうしても惹かれてしまうようなこと。わたしの場合、そうした感覚が、特定の図形や数にも生じることがある。個別の図形や数を愛でる感覚で、それはわたしにとってきわめて具体的なことなのである。
このエッセイ集は、そのような図形や数好きとして、そして、美術・文芸好きのつぶやきとして、さらには、歴史上最も古い数理科学の末裔である天文学の一端にたずさわってきたエンジニアとして、頭の中に浮かんだあれこれを書き留めたものである。」


と語られているように、本書は折り紙作家、折り紙の数学・科学・歴史等に関する研究者の前川淳さんが紙飛行機やパスタの形の機微、巨大望遠鏡、数学の難題の折り紙による解法、「無限」の御幣、などなど幅広い話題をトピックに書き下ろしたエッセイです。どの一篇にも先達たちの考究への慎ましやかな眼差しがあり、温かいユーモアが漂います。この一冊に目を通してみると、世界は色々な幾何学に溢れているということを再認識できるとおもに、前川さんの少し科学オタクなところも垣間見えてとても面白く味わい深いです。


好奇心を突き詰めると、こんなところまで行けるんだと思わせてくれる一冊です。

さあ、折り方をほとんど忘れてしまった折り紙でも久々に折りますか。



<目次>

目 次


折り紙と数学

高次元化した一筆書き/折り目に関する定理


幻想の補助線

日時計の天使/奇跡を計算する


パスタの幾何学

帽子、貝殻、百合の花/二重螺旋と驚異の定理


解けない問題

デルフォイの神託/三大作図問題


解けない問題を解く

折り紙による角の三等分/自分自身が定規になる/並列する世界


単純にして超越

ただし角はない/どこまでも続く


すこしずれている

幅のある線/正確さと美しさ/菱餅の菱形


五百年の謎

デューラー・コード/デューラー予想


吾に向かいて光る星あり

真砂なす数なき星のその中に/かの星に人の棲むとはまことにや


四百六十六億光年の孤独 あるいは、四十三京五千兆秒物語

20億年の理由/20億光年の測りかた/追記


管をもって天を窺う

宇宙電波観測所/毒をもって宇宙を解す


遠くを見たい

巨人の肩/電波のプリズム/より精密に見たい、そして古い幾何学


折り紙の歴史に関わるあれこれ

『子供の遊戯』と風車/『風流をさなあそひ』と折り紙


あやとりの話

猫のゆりかご/手順と構造


紙飛行機の話

飛行機より古い紙飛行機/よく飛ぶイカと飛びにくい鶴


無限の御幣

堀辰雄と数学者/横光利一と御幣


字余りの歌と長方形の中の円

字余りの歌/長方形の中の円の作図


千羽鶴の話

千羽鶴の象徴性/千羽であることと糸で繋ぐこと


あとがき

参考文献



前川淳

1958年東京都生まれ。折り紙作家、折り紙の数学・科学・歴史等に関する研究者。東京都立大学理学部物理学科卒業後、ソフトウェアエンジニアとして天文観測および解析に関わる仕事のかたわら、折り紙の創作と研究を続ける。著書に、『ビバ!おりがみ』(笠原邦彦編、サンリオ、1983)、『本格折り紙――入門から上級まで』(日貿出版社、2007)、『本格折紙√2』(日貿出版社、2009)、『折る幾何学――約60のちょっと変わった折り紙』(日本評論社、2016)ほか。ブログ「折り紙&かたち散歩」http://origami.asablo.jp/blog/

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