古代文明と星空の謎 / 著者・渡部潤一 / ちくまプリマー新書
古代の遺跡から夜空を見上げて
天体を観測することと、古代の遺跡を発掘・探索することは共通する点が多いように思います。それは、理解が及ばないことへの探究心、一言で言ってしまえば『ロマン』とでも言い換えることができそうです。
この両者の研究、天文学と考古学の狭間の研究が、本書で語られている古天文学という研究なのです。この研究は古代の遺跡に残された遺物からその当時の天体を観測する謂わばタイムスリップした天体観測のようなことです。多くの古代遺跡は何らかの天体や冬至、夏至、春分、秋分といった季節の現象に倣って建造されていたりします。本書『古代文明と星空の謎』はそういった古天文学のアプローチから古代の時代に瞬いていた天体について考えている一冊です。
エジプトのピラミッド、マヤ文明の遺跡群、広大な海とポリネシア、そして世界最古の天文図があったキトラ古墳などなど、いにしえの人たちがどのような思いで夜空を見上げていたのか是非思いを馳せていただければと思います。
渡部潤一
1960年福島県生まれ。東京大学理学部天文学科卒。東京大学大学院、東京大学東京天文台を経て、自然科学研究機構国立天文台上席教授・副台長、総合研究大学院大学教授、国際天文学連合副会長。理学博士。国際天文学連合では、惑星定義委員として準惑星という新しいカテゴリーを誕生させ、冥王星をその座に据えた。著書に『面白いほど宇宙がわかる15の言の葉』(小学館101新書)、『第二の地球が見つかる日』(朝日新書)など。