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アイノとアルヴァ 二人のアアルト

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アイノとアルヴァ 二人のアアルト / 編集・アルヴァ・アアルト財団、ギャラリー エー クワッド / 国書刊行会



普通の人の幸せのために



フィンランドの首都ヘルシンキから路面電車のトラムに乗り込み15分。ヘルシンキ市内を縦横無尽に走り回る緑と薄山吹色を基調としたトラムは、青い晴天の空でも、はたまた一転して曇天の空にも良く映え、ヘルシンキという街に彩りを加えてくれています。
初の海外旅行で一人旅。数日経ったとはいえ停留所の車内アナウンスも無いトラムは心細いもの。車内の電光掲示板が次の停留所に切り替わるのを絶対に見逃すまいと、変わりゆく車窓からの街の景色をよそにじっと見続けていると目的の停留所が表示され急いで降車ボタンを押し郊外のエリアに降り立ちます。
そのエリアはヘルシンキの街を代表する“目に見える”明らかなランドマークと言われるような施設やモニュメントなどがあるわけではなく、本当にただの街の中心部から外れたベッドタウンといったところでしょうか、とても静かでヘルシンキに暮らしていくならこういった場所だろうなと思ったほどです。そんな静かな場所にあるのがアアルトハウス。先ほどランドマーク的なものは無いといったところですが、デザインや建築などが好きな方たちはこれこそがランドマークだといっても過言では無いのかもしれません。控えめで街の風景に溶け込んでしまっている建物が世界的な建築家でデザイナーでもあるアルヴァ・アアルトの自邸です。今では日に数回ツアーが組まれて見学する機会がありますがいわゆる観光地のツアーというものではなく、どちらかというと複数人でアアルトのお宅にお邪魔させていただいているような親しみやすさを感じることができるはずです。


アルヴァ・アアルトは

当の昔にこの世からは旅立ってしまっているのですが、彼が残したデザインや空間からは他のものを寄せ付けないような鋭さや斬新さよりも、親しみやすさや温かさが際立っているように思います。


このことを私自身、十数年前にアアルトハウスに初めて訪れた時から感じ、そういった空気感はどこからくるのだろうかと思っていましたが、この本書『アイノとアルヴァ 二人のアアルト』を一読するとその訳がなんとなく分かってくるはずです。


アルヴァ・アアルト財団が編集に携わっていることもありその情報量は膨大で、今、巷でよく見かけるアアルトがデザインしたスツールなどが生まれる以前のまだ若手だった時からのエピソードなどが丁寧にまとめられているところが、デザイン好き、アアルト好きにはたまらないのではないのでしょうか。


そして読み進めていくと初期のデザインや設計した建築などを見ると今のザ・アアルトというような流線を基調としたデザインとは全く異なることに気がつくはずです。では、アアルトと聞いて今思い浮かべるデザインはどういったところから生まれてくるのでしょうか。それはパートナーとして25年の歳月を共に過ごした妻・アイノの影響が大いにあることが伺えます。その中身はぜひ本書の中でお楽しみください。


アイノとアルヴァは、普通の人たちの幸せを願って様々なものをデザインしてきました。現在、ありとあらゆるところで彼の象徴的なスツールが暮らしの中にとけこんで使われているのを二人はどんな風に思うのでしょうか。



デザイン・建築関係以外の方で、ご夫婦で何かをやられている方もアイノとアルヴァの関係性から影響を受けることが多いと思います。おすすめです。




<目次>

序文 トンミ・リンダ(アルヴァ・アアルト財団CEO)


イントロダクション 二人のアアルト


1章 イタリアから持ち帰ったもの

 1-1 アアルト事務所における協働の始まり

 1-2 マーケット広場およびサウナ計画

 1-3 ユヴァスキュラの労働者会館

 1-4 ムーラメの教会

 1-5 ヴィラ・フローラ


2章 モダンライフ

 2-1 トゥルクの自宅兼事務所

 2-2 最小限住宅展

 2-3 スニラのパルプ工場と住宅地区

 2-4 木造規格化住宅


3章 木材曲げ加工の技術革新

 3-1 ロウ チェア

 3-2 パイミオ チェア

 3-3 L -レッグ

 3-4 特許の取得


4章 機能主義の躍進

 4-1 パイミオのサナトリウム

 4-2 ヴィープリの図書館


5章  アルテック物語

 5-1 アルテックの設立と創業者

 5-2 マニフェスト

 5-3 アルテックの販売ネットワーク

 5-4 レストラン・サヴォイのインテリア

 5-5 幼稚園、保育園、保健医療施設のためのインテリアと家具 

 5-6 マルミ空港旅客ターミナルのインテリア


6章 モダンホーム

 6-1 アアルトハウス

 6-2 マイレア邸


7章 国際舞台でのアアルト夫妻

 7-1 ミラノ・トリエンナーレ

 7-2 パリ万国博覧会フィンランド館

 7-3 ニューヨーク万国博覧会フィンランド館

 7-4 ベイカーハウス学生寮


エピローグ 分かち合ったヴィジョン

 E-1 アイノとアルヴァ・アアルト25周年記念展

 E-2 ファミリーコレクション


【論考】

・出会いと共鳴から生まれる創造  皆川 明

・公共に尽くしたアイノ・アアルト  岡部三知代

・アアルトの木製レリーフの芸術と技術  安東美穂子/パトリック・フレミング

・アアルトのブランド戦略  ウッラ・キンヌネン

・理性で整えたカタチ、感性に委ねられたカタチ  白川裕信

・アルヴァ・アアルトとアイノ・マルシオ゠アアルトー近代建築とモダンデザインを追求するパートナー  ニーナ・ストリッツラー゠レヴァイン


【コラム】

・シネクラブ「プロイェクティオ」  加藤 絢

・サヴォイ・ベース  小野尚子

・日本人外交官 市河彦太郎・かよ子夫妻との交流  三木敬介

・近代建築国際会議  小野尚子

・マイレア邸への日本建築からの影響  三木敬介

・アイノとアルヴァのガラス器デザイン  小野尚子

・アイノ・アアルトと写真  加藤 絢


【インタビュー】

・アアルト・ファミリー・インタビュー ヘンリック・アアルト/ヘイッキ・アアルト゠アラネン

(インタビュー・構成・翻訳:迫村裕子、岡部三知代)


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・モダンキッチンとアアルト夫妻

・アイノとアルヴァを取り巻く人々(相関図)

・二人のアアルト年表

・主要参考文献

・掲載図版リスト

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