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一杯のおいしい紅茶 - ジョージ・オーウェルのエッセイ

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一杯のおいしい紅茶 - ジョージ・オーウェルのエッセイ / 著者・ジョージ・オーウェル / 中央公論新社



小さいものへの愛情




目をかけてあげるということは、この言葉以上の意味合いがあるように思えます。それはただ見るだけではなく、観る、観察して見るのです。
特に何かいのちを育てている方はご理解いただけそうですが、直接観るというよりは何かぼんやりした目線で物事を俯瞰しながら観て見ると、視点はぼんやりしているはずなのに、なぜかしっかりと見えてくる時があるのです。そんなふうにすることが目をかけてあげるということなのだろうと最近は感じています。


ジョージ・オーウェルという人物の名前を聞くとまず思い浮かべるのが、村上春樹著書の『1Q84』の題材にもなっている『1984』です。全体主義国家によって分割統治された近未来世界の恐怖を描いていた内容のように、何方かと言えばディストピアSF小説という位置なので、著者本人にもそんな色眼鏡で見てしまうかもしれません。『1984』の内容も当時の社会背景を鑑みてそれを批評する形としてSF小説として仕立て上げられたようですが、単行本の発行もそれほど多くなく、新聞や雑誌などへの論考や時事的な批評、あるいは書評を契機に文化論などを展開することが膨大にあったようなので、小説家というよりは、ジョージ・オーウェルのその眼差しは批評家そのものだったことが伺えます。


それは本書『一杯のおいしい紅茶 - ジョージ・オーウェルのエッセイ』を読んでみてもわかることで、生活全般に対する批評を痛快に論じています。またそれは世の中に対しての政治的な部分というよりは、むしろ個人的な生き方や好みがエッセイとしてまとめられています。

えっ?そんなことにもそんな風に考えるの!?とクスッと笑ってしまう内容がちらほらとあるように、その憎めない眼差しはジョージ・オーウェルの愛情なのだということが読み進めてみると理解できることでしょう。


本書の序盤に登場する『一杯のおいしい紅茶』で論じられているやり方で淹れた紅茶をお供に読みたいそんな一冊です。



ジョージ・オーウェル
本名エリック・アーサー・ブレア。一九〇三年インドに生まれ、イギリスで育つ。イートン校を卒業後、警察官としてビルマで勤務。三三年からルポルタージュ『パリ・ロンドン放浪記』、小説『ビルマの日々』を発表。三六年にはスペイン内乱の国際義勇軍に参加し、三八年『カタロニア賛歌』を出版。第二次世界大戦中はBBC放送に勤務、「トリビューン」誌の編集主任を務めた。四五年に小説『動物農場』がベストセラーとなる、四六年に移り住んだスコットランドのジュラ島で未来小説『一九八四』を書き上げ、五〇年に肺結核のため死去。

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