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探していたのはどこにでもある小さな一つの言葉だった

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探していたのはどこにでもある小さな一つの言葉だった / 著者・若松英輔 / 亜紀書房




言葉は彫刻




毎朝文章を書く生活が3年目になろうとしている。本を導き手に自分の記憶を辿ることをメインに文章を書いているけれど、その大半はなんとなく本の内容の魅力とリンクしつつこういった切り口であれば自分の記憶と繋がってくるかもなという心許ない糸を丁寧に手繰り寄せる作業に近いような気がする。書いたいことはないけれど書いているうちにどんどん記憶の断片がパズルのピースのようにハマりはじめ、一つの景色になっていくのだから面白い。

“ミケランジェロは、自分はダヴィデ像を作ったのではない。大理石から彫り出したのだと語ったと伝えてられるが、「書く」という営みにも同質のことがいえる。”(本文p53より)

本書『探していたのはどこにでもある小さな一つの言葉だった』の著者・若松英輔さんがこう述べているようにまさしくそうした感覚なのだ。考えがまとまっていないから書けないのではなく、書かないから考えがまとまっていかないのだ。

さて本書は批評家であり随筆家である若松さんが、「手放す」「信じる」「応答する」「聞く」「読む」「書く」などの誰にとっても馴染みのある小さな言葉から、深く生きるためのヒントを照らすエッセイ集として一冊にまとめている。その一つ一つ若松さん自身が書きながら考えていった形跡を感じることができ、さらにそれらの論考に対応する本の文章の引用もあるので関連する書籍にも手を伸ばしたくなってくる。

機会があれば自分もこんな自身の考えをまとめつつ、誰かの背中をポンと押してあげられるような一冊を認めたいものだなと思わせられた。

言葉は彫刻、そんなことが身に染みる一冊。



<目次>

この本の用い方―はじめに


1.失われた物語性を求めて……新美南吉

2.老いて増す能力……永瀬清子「第三の眼」

3.花について……岡倉天心『茶の本』

4.読書家・購書家・蔵書家……井筒俊彦とボルヘス

5.伝統と因習について……池田晶子の教え

6.話す・書く・聞く……金子大栄「対応の世界」

7.信念について……小林秀雄・論語・坂村真民

8.かなしみとは……鈴木大拙『無心ということ』

9.良知とは何か……王陽明の教え

10.偶然と運命について……九鬼周造の思索

11.人生の問い……C・S・ルイス『悲しみをみつめて』

12.言葉を練磨する……マラルメ「詩の危機」

13.本との出会い……石垣りんの詩と随筆

14.たった一つの言葉……サン=テグジュペリと須賀敦子

15.研究・調査・読書……井筒俊彦の創造的「誤読」

16.意志について……フィヒテ『人間の使命』

17.画家の原点……中川一政『画にもかけない』

18.写生について……正岡子規から島木赤彦へ

19.創造的に聞く……ミヒャエル・エンデ『モモ』

20.抽象と具象について……道元『正法眼蔵』

21.読むことの深み……ドストエフスキーをめぐって

22.想像力について……三木清『構想力の論理』

23.好奇心について……アーレントとモーム

24.手放すとは……『ゲド戦記』と美智子さまの詩

25.深秘とは……リルケと原民喜


おわりに

ブックリスト




若松 英輔
1968年新潟県生まれ。批評家、随筆家。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。2007年「越知保夫とその時代 求道の文学」にて第14回三田文学新人賞評論部門当選、2016年『叡知の詩学 小林秀雄と井筒俊彦』(慶應義塾大学出版会)にて第2回西脇順三郎学術賞受賞、2018年『詩集 見えない涙』(亜紀書房)にて第33回詩歌文学館賞詩部門受賞、『小林秀雄 美しい花』(文藝春秋)にて第16回角川財団学芸賞、2019年に第16回蓮如賞受賞。

近著に、『詩集 ことばのきせき』(亜紀書房)、『霧の彼方 須賀敦子』(集英社)、『光であることば』(小学館)、『藍色の福音』(講談社)、『読 み終わらない本』(KADOKAWA)など。

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