対話と内省

『雑談入魂』
こんな言葉を聞いたのは初めてだった。

これは北欧やデンマークを中心とするリサーチを通して組織や個人のクリエイティブシンキングをサポートする共創型アクションデザインファームの株式会社Laereが日々大切にしている社内標語のようなもので、本質的には、さりげない雑談などの対話の中に、本音や本質がたくさん隠されているということを暗示するキーワードとのことだった。
こちらのLaereさんには、様々なご縁が重なって、自身のクライアントの展示会企画の中のインタラクティブなコンテンツの企画部分について正味2ヶ月ほどサポートしていただいた。新商品のお披露目をメインにした展示会の中で、どのようにインタラクティブな状況をデザインしていくかということが今回のポイントだったのだが、このコンテンツを作っていくプロセスの中でも様々な対話を行なって創り上げていったのが印象的だった。
具体的には、以前までの展示会の課題感を共有するのはもとより、それ以上に大切だったことが、Laereさんたちからの現地デンマークでの実生活の経験値に基づいた話、そして僕からは北欧各国を旅して、インタビューしてきた中で様々な方たちからの言葉を紡いで見てきた兆しについて言葉を交わらせていった。こういった場面では、サポートを受ける側、サポートする側といった役割や立場を超えて話が展開していってあらぬ方向に話が進みながらも、最終的にはいい落とし所に着地していくのが面白い。それはまるで、北欧に取材に行った際にクリエイターたちと会話している時が蘇ってくるようで、なんだかとても懐かしい気持ちにさえなっていった。

実際の展示会中に実施した内容としては、クライアントのお取引先であるバイヤーのみなさんやメディア・プレスのみなさんに『日々の暮らしの中で大切にしていることは何か?』という問いに対して、メッセージカードに書いて答えてもらいながら、対話をしていくというものだった。その問いに一言のキーワードで答える方もいれば、文章でしっかりとまとめる方もいて、属する業界としては、みな同じインテリア業界なのにも関わらず、当たり前と言ってしまえばそれまでなのだが、大切にしていることの視点がばらけているのが興味深かった。
そしてそれぞれの視点を俯瞰で捉え直してみると、“ゆるい文脈”として繋がっていることに不思議な心地よさも同時に感じることができた。具体的にどのような回答があったかということの明言はクライアントワークであることもあり、この場では避けたいが、“ゆるい文脈”としてはインテリアを扱うショップやそれらを軸にメディア活動をしている方々が大切にしていることの属性として『内省』について重きを置いている方々が多いという印象だった。

『内省』とは、辞典によると「現実に起こった出来事を客観的に振り返り、そこから窺える自分自身について見つめ直す行為。リフレクションとも呼ばれる。もともと内省には、鏡に映った自分・物事という意味がある。自分自身と向き合い、言動を振り返ることで、自ら気付きを得ることを目的とする。」といった意味があるようなのだが、どこかで見聞きした言葉が並んでいると思ったら、『面影 book&craft』のaboutページに自分たちがありたい状況をイメージして書いた言葉そのものだった。
まさしく自分たちが実店舗として展開していく『面影 book&craft』では、こういった『内省』の場やそれを起こすきっかけになるようなプロダクトや本をラインナップとして紹介していく。何かの問題をすぐに便利に解決する与えられるものではなく、自分が使い込むことによって自身にフィットしていくモノやあなた自身に何か問いかけてくる言葉がまとめられた本、モノやコト(言葉)と自分が掛け合っていく楽しさや豊かさを届けていけたらと思っている。

そしてもちろん『内省』を促していく、対話なども作り手、使い手分け隔てなく出来たらいいのだろう。クライアントワークの中で出てきた対話やそのプロセスの中から、「面影 book&craft」が目指していきたい方向性が思わぬ形で言語化できた。何がどう繋がっていくかというのは予測できないのだけれど、対話と内省という外向きのベクトルと内向きのベクトルが交差していくような状況は、新たな気づきと行動を促す作用があると信じてもいいのではないだろうか。